野次馬の声を聞いた私は呆然としていた。
キ:「助からないなんて言ってたけど、そんなの嘘よ。
だって私少し苦しいけど、大丈夫そうだし。」
後にここは、いわくつきの場所だと知る。
事故に遭った人は、たいがい助からないのだそうだ。
そうこうしている内に、救急車が到着。
救急隊員に体のあちこちを、調べられた。
救急:「これは、肋骨が折れているかもしれない。呼吸は出来るか?」
と聞いてくる。苦しいながらも私は呼吸は出来ていた。
救急車が発車すると同時に、私の母が乗り込んできた。
事故があってから、そんなに時間もたっていないのに、
何故 車の運転をしない母が救急車乗り込む事が出来たのか・・?
その件は回復してから不思議な話として、
後日母から聞く事となる。
私はそのまま市内の病院に運ばれた。
車に飛ばされ意識のない間、何処を打っているかもわからない。
いろいろ検査が行われたが、打撲以外これといって怪我はなかった。
その後警察の事故調査が行われた。
私は事故の証言を求められ、それを聞いた警察官に頭を傾げられてしまった。
警察:「お嬢さん、車の来るのを確認してから渡ったの?」
キ:「はい。そうです。それと女の人が大丈夫だから、渡れって
言ったので急いで渡りました。」
警察:「女の人?そこにいたの?」
キ:「いいえ。声が聞こえてきたので・・・。」
まだ幼くて純粋だったので、私は正直に話してしまった。
警察:「・・・。まぁ、いいか。疲れているんだよね。
ゆっくり休んでね。」
とこの発言は相手にされず、うやむやにされてしまった。
姿のない声に促されたなどと、信用するはずもなかったからである。
ふっと私は事故の状況を思い起こしていた。
考えてみれば死んでいてもおかしくない事故だった。
私は現場の交差点から12Mも飛ばされていた。
気がついて上を見上げた時には、自分の頭の上に橋げたから
車体半分が辛うじて、乗っていた。
そのまま車が落ちていれば、当然私は下敷きになっていた。
ただ、うっすらと記憶として残っているのは、
やさしく抱きかかえて静かに私を降ろしてくれた、「大きな腕の感触。」
それが誰かは想像出来ないが、なにかの存在が助けてくれたのは間違いない。
私が事故に遭った瞬間以降、いろいろな場所で同時期に救いの
手が差し伸べられていたのである。
いったい・・・誰?
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