事故後、もう一つ不思議な事を聞かされた。
私の母が、いち早く救急車に乗り込んだ時の話しだ。
事故の起きる朝から、母は嫌な予感を感じ、私が部活動の練習に
行くのを止めていた。
サボる事のない私が珍しく、練習に行くのを嫌がった事と胸の中のざわめきを感じたからだそうだ。
母が夕食の支度をしていたその時、救急車のサイレンを遠くにきいていた。
それと同時に玄関に、見知らぬ男の人が尋ねてきた。
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男:「奥さん、大変だ!お宅の娘さんが事故にあった。」
母:「えーーっ、そんな・・どこで?」
男:「ここから5分位の交差点だ。今救急車が来る。俺が自転車で
乗せていくから、早く現場に行かなきゃ。」
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なにせ昔の田舎の話なので、携帯電話はもちろん、連絡手段は人の足である。
疑い深い母が、なんとその男の人の自転車の荷台に飛び乗り、
2~3分という早業で、事故現場に到着していた。
それゆえ私が運ばれる救急車に間に合い、一緒に病院まで同行出来たのである。
私はそんな母の到着を見て、
事故に遭ったばかりのその場所に、何故母がいたのか不思議だった。
母が私の無事を確認した後、その男の人に「お礼」をと思い、
事故現場に居合わせた多くの人に尋ねてみたが、
誰もその人物を見ていないのである。
いったいどこの誰だったのか・・今を持ってしても分からずじまいである。
なんとありがたかった事か。
今でもその話しをすると、手を合わせている「母」である。
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